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NTTは2023年度中にも独自開発した生成AI(人工知能)を企業向けに展開する。金融や医療など分野に応じた専門知識を学習させ、各業界の顧客ニーズにきめ細かく対応する。汎用的な生成AIを展開する米テック企業とは一線を画し、使い勝手と運用コスト低減で差異化する。「和製AI」が巨大テックに対抗するモデルケースになる可能性がある。
NTTは近年、通信に加え、AIを含む法人向けのIT(情報技術)サービスに注力している。今後5年で全社で成長分野に約8兆円の投資を計画し、うちAIやロボット活用で企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する事業に3兆円以上を振り向ける。
研究開発の成果を事業化する機能も強化しており、言語分野のAIで国内トップ級の知見を生かす。
NTTが独自開発するのは生成AIの基盤となる「大規模言語モデル」と呼ぶ技術だ。膨大な文書データを学習して文章の作成や要約、対話、校正など幅広い作業に応用できる。NTTは法人向けITサービス事業を手がけるNTTデータやNTTドコモなどを通じ、金融や医療、法律など業界・分野特化型として提供する。
例えば、金融向けには市場調査の結果やアナリスト分析を学習させて投資の意思決定に役立てられる。医療向けは既往歴や病状から薬の最適な組み合わせを提案し、医師の判断を支援する活用法が想定される。将来は音声認識やカメラを使った画像認識を組み合わせ、使い勝手を高める。
「Chat(チャット)GPT」を手がける米新興オープンAIのほか、マイクロソフトやグーグルなど米テック勢は一般ユーザーからビジネス活用まで汎用的な生成AIに相次ぎ参入する。NTTは法人顧客の使いやすさを追求する。
NTTは独自開発する大規模言語モデルについて、性能の指標となる「パラメーター」の数を70億~300億とする計画だ。オープンAIが20年に開発し、チャットGPTのベースになった「GPT-3」のパラメーター数は1750億で、NTTはその10分の1程度になる。
パラメーター数の多いモデルは幅広い知識を身につけられるが、消費電力が膨大なのが課題だ。チャットGPTの運用費は1日あたり70万ドル(約1億円)にのぼるともいわれる。
NTTは英語や日本語を扱う基本的なモデルを開発したうえで、金融や医療といった専門知識を学習させる。チャットGPTは社会問題から娯楽やスポーツまで広範な質問に対応するが、NTTは業務に必要な情報に絞って効率を高め、電力コストも大幅に抑える。
生成AIはメールや会議資料、報告書の作成や議事録の要約を通じて生産性を高めると期待される。国内でも利用が進み始めているが、より中核的な業務に取り入れるには企業が社内に抱えるデータとの連携も必要だ。
NTTはセキュリティーや企業内のデータの適切な扱いなどを前提に、開発したモデルを顧客ごとに最適化して提供することも視野に入れる。
法人向け生成AIは米IBMやマイクロソフトも提供を急ぐ。使い勝手の良さと運用コスト低減を追求して法人ニーズを開拓する戦略は、先行する米テック勢に対抗する和製AIの活路の一つになりうる。
NECも特定分野に特化した独自の生成AIの提供を23年中にも始める計画。チャットGPTのような汎用的な使い方より、個々の用途に絞って活用する方が市場が大きいとの見方もある。業務に使いやすい生成AIが今後広がりそうだ。
(日本経済新聞)