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REIT、1倍割れ続く 「PBR」震災後最低に迫る オフィス、人口減が影 東京市場 2023/07/11

東京市場でオフィス不動産投資信託(REIT)の評価が低迷している。株式のPBR(株価純資産倍率)に相当する指標は1倍を割れ、東日本大震災後など市場の混乱時の水準に迫るほどだ。東京圏のオフィス拡大を支えてきた働き手の増加が転機に差し掛かったことに、いよいよ市場の目が向かい出した。

7月7日、平日昼の東京・お台場。新交通システム「ゆりかもめ」の駅前の大型ビル「台場ガーデンシティビル」の入り口には、テナント募集のプレートが掲げられていた。

同物件を保有するREIT、ジャパンエクセレント投資法人の公表資料によると2022年末時点の同ビルの稼働率は約9割だ。11年の取得以降、満床稼働が続いていたが、21年上半期に約17%が空室となった。2年経過した今も、埋め戻しは半分ほどにとどまっているようだ。

「全員出社が前提の面積は不要となり、同じコストで『グレードアップ移転』できる。企業のオフィス需要は都内でも中心部に向かい、お台場など交通アクセスなどで劣るエリアは選ばれにくくなっている」。業界関係者はこう嘆息する。

臨海部オフィスの苦戦ぶりは、三菱UFJ信託銀行による分析でも鮮明だ。社内データを基に、空室のテナント募集が始まってから決まるまでの期間をエリアごとに推計したところ、「有明・台場」は最も長く、平均25カ月に達していた。「勝どき・晴海」や「豊洲」でも長期間埋まらないビルが目立っている。

竹本遼太上級調査役は「エリアによっては賃料を見直してもテナントが見つからないビルもある」と指摘する。都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)全体でみても、募集期間は新型コロナウイルス禍前の4カ月から足元で11カ月にまで伸びてきた。

東京証券取引所では、REITの投資口(株価に相当)が低位に沈む。上場REITの値動きをまとめた東証REIT指数は1800台半ばとコロナ前の2200台に比べ2割程度低い。

深刻なのは時価総額が保有資産の価値すら下回っている点だ。保有資産を時価評価し、負債を引いて計算するNAV(ネット・アセット・バリュー)に対する時価総額の大きさは「NAV倍率」と呼ばれる。岡三証券によるとオフィスREIT銘柄平均のNAV倍率は6月末時点で0.89倍と1倍を下回る。

現物の不動産投資と比べた売買のしやすさから過去平均1.13倍と1割程度の「プレミアム」がつくことが普通だが、ここ9カ月ほど資産価値割れが続く。NAV倍率は東日本大震災後やコロナ拡大初期に迫る低さだ。

目先は森ビルの「麻布台ヒルズ」など大規模再開発の竣工が重なり賃貸市況の需給が一段と緩むことへの懸念が強い。根底には、東京市場が抱える問題への警戒がある。

「東京のオフィス需要拡大は終わった可能性がある」。モルガン・スタンレーMUFG証券で不動産株やREITを担当する竹村淳郎アナリストは3月のリポートで警鐘を鳴らした。

(1)出生率(2)首都圏人口比率(3)労働力人口比率(4)第3次産業の比率(5)1人当たりのオフィス面積という5変数でオフィス需要の推移を分析したところ、バブル崩壊やリーマン危機など景気激変下でも需要は右肩上がりで伸びてきたことが分かった。人口がピーク(1億2808万人)に達した08年以降も、退職年齢の上昇や女性の社会進出が押し上げに寄与した。

今後はどうか。高齢化で労働参加率は30年ごろに限界に達し、1人当たりのオフィス面積も実態に即して1割程度縮小するとの前提で、50年時点のオフィス需要は22年比で19%減るとみる。

オフィス需要が後退したために、住宅街に変貌していくエリアも増え始めた。都市未来総合研究所の平山重雄・常務研究理事がREITの開示資料をもとに同一地区におけるオフィスとマンションの賃料収入単価を比較したところ、人形町や新川といった古くからのオフィス街でマンション賃料がオフィスを上回る「逆転現象」が起きていた。「オフィス街として継続が難しい『限界街区』が都内でも生じつつある」(平山氏)

オフィス稼働率の低下で「東京の不動産価格もすでに実態としては下落し始めた。今後半年から1年後には地価など統計上にもあらわれてくる可能性がある」(ドイチェ・アセット・マネジメントの小夫孝一郎アジア太平洋不動産リサーチヘッド)との声もある。

スポンサーとなる大手不動産から魅力が落ちた物件を買う慣習の見直しや、シンガポールのREITのような海外展開など、抜本的な手を打たなければ、地盤沈下は避けられなくなる。

(今堀祥和)

(日本経済新聞)

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