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SMBC日興の相場操縦事件 ガバナンス「異常な状況」 2022/06/25

SMBC日興証券は24日、相場操縦事件を巡る調査委員会の報告書を公表した。投資家への株式の転売を成立させるために自己資金を使った株価の買い支えについて、「人為的な価格形成の疑いを抱かせる行為と認めざるを得ない」と指摘し、ガバナンス(企業統治)の機能不全を批判した。近藤雄一郎社長は同日の記者会見で「深刻な問題で抜本的に改善しないといけない。自身を含む社内処分などを適切に対処する」と述べた。

SMBC日興は、企業の大株主から一括で株を買い取り別の投資家に転売する「ブロックオファー」取引を巡り、10銘柄に自己資金で大量の買い注文を入れていた。東京地検特捜部はこれを金融商品取引法違反(相場操縦)罪にあたるとして、法人としての同社や元副社長らを起訴している。

調査委は、SMBC日興が株価を買い支えすることで「(株価下落による)取引キャンセルを回避する意図があった」と指摘した。取引を成立できれば今後も新規取引を受注でき、「会社の利益に貢献する行為だと自負する者もいた」という。

報告書によると、問題となった10銘柄のブロックオファー取引(1銘柄は最終的に中止)の販売金額は計407億円だった。SMBC日興が得た差益は開示しなかった。

同社が株価を買い支えし、取引を成立させようとする強い姿勢も明らかになった。例えば、19年12月のある銘柄のブロックオファー取引では、SMBC日興が株式市場の取引時間終了前の1時間で約30万株の買い注文を出した。取引執行日の出来高株数に対し、自己勘定取引による買い株数の割合が約18%に達した。

焦点は経営責任だ。近藤社長については、元副社長から株価の買い支えを示唆するメールを受け取っていたことが明らかになった。賞与方針を記した添付ファイルの中に、値崩れした時に自己ポジションを用いて価格をサポートする行為を「他部門への貢献事例」として扱う記載があった。

近藤社長は24日の会見で「この(価格をサポートしたという)部分については記憶がない。(認識していたら)絶対にそれは止めていた」と関与を否定した。調査委も近藤社長が、この記載を明確に認識していたとは認定しなかった。

調査委は20年まで社長を務めた清水喜彦氏の時代に、コンプライアンス部門を含むバックオフィスの人員を営業部門に移す配置換えがあったことにも言及した。また上場株の売買などで不正がないかどうかを確認する審査担当者も人手不足で、1人で1日に3000~5000件を処理する場合もあり、社内の自己勘定取引を振り返る余裕がなかったという。

その上で調査委は「コンプライアンスへの配慮が十分であったか疑問が残る」と指摘した。報告書で「(証券取引等監視委員会の検査という)重大な契機においても不公正取引の懸念を察知できなかったのは、異常な状況と言わざるを得ない」としている。

SMBC日興は現在、ブロックオファー取引を停止している。今後は「問題点を検討して再開について慎重に考えていきたい。今の段階で再開する可能性はない」(野津和博専務執行役員)。再発防止に自己資金での売買ルールの明確化など管理体制も強化する。

証券取引等監視委員会は3~4月に法人としてのSMBC日興や幹部らを東京地検に告発し、5月ごろに改めて同社の内部管理体制などが適正だったかを調べるための立ち入り検査に着手した。ガバナンスの問題点を確認したうえで、今夏にも金融庁に行政処分を勧告する見通しだ。

金融庁も同社の内部管理体制の甘さを厳しく見ている。監視委の勧告の結果を踏まえ、一部業務の停止も視野に行政処分を検討するとみられる。

(日本経済新聞)

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