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VC、脱炭素特化で新興投資 ANRIは100億円ファンド 2022/01/25

脱炭素に貢献するスタートアップへ投資する特化型ファンドが広がってきた。ベンチャーキャピタル(VC)のANRIは運用額100億円規模を目指すファンドを新設した。環境関連技術を意味する「クリーンテック」への関心が世界的に高まるなか、トヨタ自動車やKDDIも脱炭素戦略の一環で設立している。VCの参入でマネー流入が加速すれば、新興勢の成長に弾みがつく。

ANRIが新設するファンドの投資先1号となるエクスフュージョンはレーザー光を使った発電を研究
「グローバルで通用するクリーンテック企業を日本でつくる」。ANRIの鮫島昌弘ジェネラルパートナーは新ファンドの狙いをこう説明する。収益モデルの確立には一定の時間がかかると見越し、ファンドの運用期間は最長15年に設定した。ANRIの従来平均より2年ほど長い。出資額は1社あたり最大15億円を想定する。

最初の投資案件はレーザー光を活用した発電技術の実用化を目指すEX-Fusion(エクスフュージョン、大阪市)になる見込みだ。投資先は既存企業に限定しない。大学などで有望な研究成果を探し、新会社設立を促しながら投資対象を発掘する考えだ。

すでに関西電力のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のK4ベンチャーズなどから約40億円を集めた。投資先との事業提携を見込める電力・ガス会社などに引き続き出資を募る。

スタートアップ関連のデータベースを持つフォースタートアップスによると、脱炭素に特化して国内スタートアップへ投資するファンドは21年までに2本が立ち上がった。ANRIは3本目で、VCでは初めてだ。

事業開発やマーケティングも支援
トヨタが21年6月に設立を発表したファンドの運用額は約160億円に達する。水素の製造や貯蔵、輸送など自社の脱炭素戦略に沿う領域で有望企業を探している。研究開発部門との連携で投資先を選ぶ点が特徴だ。投資後も専門チームが事業開発やマーケティングを支えるほか、経営方針への助言もする。

KDDIが同年11月に新設したファンドは50億円規模。多くの電力が必要なデータセンターや基地局の省エネ化につながる新興企業などへの出資を計画する。投資先の実証実験のために、自社設備も貸し出す。ファンドはSBIホールディングス傘下のSBIインベストメントと共同運営している。エネルギー分野に詳しいキャピタリストを招き、複数社を投資先候補として調査中だ。

にわかに盛り上がる脱炭素スタートアップへの投資。フォースタートアップスによると、「エネルギー」業種の企業の資金調達額(借り入れなどを含む)は21年に966億円だった。20年比で8%増え、継続比較できる12年以降で最多だった。

微生物由来で環境に配慮した新素材を開発するスパイバー(山形県鶴岡市)は394億円の資金調達を果たした。再生可能エネルギー由来の電力の需給を人工知能(AI)で分析し、効率的に取引できるシステムを手掛けるデジタルグリッド(東京・千代田)も18億円を調達している。

環境技術の「革新企業」、日本はゼロ
もっとも、海外の背中は遠い。米国は育成環境が充実している。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らは15年にクリーンテックに特化したファンドを設立、運用額は数千億円規模に達する。創業直後のツイッターへの投資で知られる著名投資家のクリス・サッカ氏の特化型ファンドは21年に880億円を集めた。

米調査会社クリーンテック・グループが革新的な環境技術を持つ企業100社を選ぶ「グローバル・クリーンテック100」の22年版で、国別では米国が最も多い。地熱発電技術を手掛けるファーボ・エナジーなど50社が入っている。カナダ(13社)やドイツ(8社)が続き、日本は1社も選ばれていない。

電力料金の比較サイトを運営するENECHANGE(エネチェンジ)はこれまでに2つのクリーンテックファンドを組成したが、いずれも投資対象は海外企業だ。ただ、篠原雄一郎執行役員は「国内も二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す政府の後押しなどがあり、様々な事業が立ち上がりそうだ」とみる。

ESG(環境・社会・企業統治)投資に詳しいニューラル(東京・品川)の夫馬賢治代表は「投資家には企業を育てる環境づくりが求められる」と強調する。先行する米欧を追うためにも、資金や人材を支援するファンドの役割は大きくなっている。

(川原聡史)

(日本経済新聞)

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