金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    George Roberts, founding partner of Kohlberg Kravis Roberts & Co.,

  • pic

    Blackstone CEO Steve Schwarzman 

投資ファンド業界最新情報

Investment fund industry latest information

VC、逆風下のインドシフト インキュベイト、6000万ドルファンドを新設/ジェネシア、東南アジアと相乗効果 2022/11/02

日本のベンチャーキャピタル(VC)がインドシフトを強めている。大手のインキュベイトファンドは現地企業に特化して投資するファンドを立ち上げる。米欧の利上げやロシアのウクライナ侵攻といった逆風のなか、VCは安定的な業績を見込めるスタートアップを探している。決済網のデジタル化や人口増を背景にインドの相対的な魅力が高まっている構図だ。

「投資ペースは緩めない」。インキュベイトがインド向けに運営する「インキュベイトファンドインディア」の村上矢代表パートナーは力を込める。2023年にも3号ファンドを設立する準備を始めた。組成額は6000万ドル(約90億円)と、2号に比べて3倍以上の規模を目指す。

企業のデジタル化を支援するスタートアップなどを探す。1社あたり100万~200万ドルを目安に投資する。組成額の6割は既存投資先への追加出資に充て、継続的な成長を後押しする。

インキュベイトは16年、インドのスタートアップへの投資を始めた。「非効率な部分が残っており、投資テーマは日本より幅広い」(村上氏)という。現状の投資先は約25社。小売事業者向けの商品仕入れアプリを開発するショップキラナや、魚介類のオンライン取引を手掛けるキャプテンフレッシュなどだ。

30年で人口1.2倍
金融引き締めなどが響き、VCはスタートアップへの投資を絞っている。米調査会社のCBインサイツによると、1~9月の投資額はインドも前年同期比13%減の174億ドルだった。ただ、中国(54%減)や日本(32%減)、米国(26%減)などに比べて落ち込み幅は小さい。

成長期待が底堅い理由の一つは人口だ。国連の推計では、インドは50年に16億人超と22年の1.2倍に増える見通し。中国や欧米は減少に転じると見込まれるなかで、市場が息長く拡大する可能性がある。

VCは決済網のデジタル化も注視している。政府主導で16年、スマートフォン経由で金融機関間の支払いや送金ができるシステム「統合決済インターフェース(UPI)」の構築が始まった。取引金額は急増している。

スマホの急ピッチな普及と相まって農業や漁業、医療の各分野でキャッシュレス化が進んでいる。現地VCのチラタエベンチャーズなどは、フィンテック関連の市場規模が30年に1兆ドルと21年の10倍に膨らむと見込む。

有望市場を巡る競争は激しい。米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによると、インド企業に投資するVCファンドは21年時点で665本。20年に比べ3割増え、15年以降で最多だった。VCは協業支援など付加価値の提供が重要になっている。

ユニコーン70社
東南アジア企業に投資してきたジェネシア・ベンチャーズはインド企業の選定を始め、23年内に現地法人の開設も視野に入れる。鈴木隆宏ジェネラルパートナーは「東南アジアと状況は似ており、知見やノウハウを生かせる」と分析する。

東南アジアに興味を持つインドVCと情報交換するほか、共同投資を通じてインド企業を開拓する。投資先の東南アジア企業との協業を支援するなど相乗効果を見込む。

ビヨンドネクストベンチャーズもインドに特化したファンドを初めて創設する計画だ。シャー・マユール・インド事業開発グループ長は「気候変動やヘルスケアに関連するテック企業への投資機会が広がっている」とみる。

ビヨンドはインドで、日系企業の新規事業開発の支援に力を入れてきた。6~8月には東芝の現地法人と連携し、インドの社会課題をテーマに事業アイデアを募るコンテストを開いた。日系企業との橋渡し役を担い、投資先の成長を促せる点を売り込む。

インド政府が認定するスタートアップは足元で8万1000社を超えた。CBインサイツによると、ユニコーン(企業価値10億ドルを超える未上場企業)は70社。米国と中国に次ぐ世界3位だ。スタートアップ業界の先行きに不透明さが増すなか、存在感は高まる公算が大きい。

(細田琢朗)

(日本経済新聞)

menu