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VCが海外進出支援を拡充 有望スタートアップ創出狙う 2023/10/31

スタートアップの海外進出を支えるベンチャーキャピタル(VC)の取り組みが厚みを増してきた。京都大系のみやこキャピタルは近く、米シリコンバレーの拠点を拡充する。政府のスタートアップ育成計画でも海外進出は重要要素の一つだ。VCの支援策が充実すれば、グローバルに活躍するスタートアップの創出につながる。

「研究開発型スタートアップが技術を実証できる機会を増やしたい」。みやこキャピタルの岡橋寛明代表は意気込む。2015年に開設したシリコンバレー拠点を現状の1人体制から複数人体制にする。

みやこキャピタルはバイオ・生命科学や人工知能(AI)といった分野の約50社に出資してきた。こうした研究開発型企業は事業化に時間がかかる点が課題だ。

日本発の有望技術をシリコンバレーに売り込み、興味を持つ企業や投資家を探す。提携やM&A(合併・買収)もサポートし、事業化に弾みをつける。投資先のなかで乳がん診断システムを開発する企業や、センサーを活用した介護施設向け見守りサービスを手掛ける企業などの実証支援を構想している。

これまで海外展開支援に積極的な日本のVCは多くなかった。言語や商習慣の壁があり、スタートアップの海外挑戦は成功確率が低いと考えていたためだ。まずは国内事業に集中し、海外展開は新規株式公開(IPO)後に着手する戦略が主流だった。

大きく2つの理由で潮目が変化している。まずは資本市場の変調だ。金利が上昇するなかで赤字先行のスタートアップはIPO時に評価されにくくなった。早めの海外進出で獲得可能性のある市場規模を引き上げ、IPO時の評価を高めようとする思惑がある。

もう一つが政府の動きだ。岸田文雄政権はスタートアップ育成を重視し、22年11月にまとめた5カ年計画では「グローバル市場に果敢に挑戦するスタートアップを生み出していく」と定めた。これに呼応する形で支援策を整えるVCが急増している。

日本経済新聞が10月にまとめた主要VC調査では、回答企業(66社)の9割強にあたる63社が支援策が「ある」と答えた。内容は「海外VCを紹介する」が43社と最も多く、「提携やクロスボーダーM&Aにつなげる」が35社で続いた。

グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)は4月、米サンフランシスコにオフィスを開設した。投資先の海外展開の足掛かりとして活用できるようにした。

併せて募集を完了した7号ファンド(運用額727億円)では、投資先の2〜3割程度が海外展開できるように支援する方針を掲げた。1社あたり最大100億円を投じる。

従来は出張ベースの支援にとどまり、投資先70〜80社のうち海外展開しているのは1割程度だった。GCPの湯浅エムレ秀和パートナーは「(企業価値10億ドル以上の)ユニコーンや(同100億ドル以上の)デカコーンを生み出したい」と力を込める。

バイオ・ヘルスケア分野に強みを持つファストトラックイニシアティブは米ボストンにキャピタリストが常駐する拠点を構える。数千件に及ぶ投資案件情報を日々扱う海外の大手VCとの関係構築を狙う。最近は有力VCと協調投資するといった成果も出てきた。

安西智宏代表パートナーは「国内の投資家はすぐに売り上げが立つ事業を評価する傾向が強まっている」と指摘する。だが、バイオ・ヘルスケア分野は事業化までに十数年かかることも多い。海外は将来の価値を評価する能力を持つVCの層が厚いという。

日本ベンチャーキャピタル協会は7月、上場・非上場合わせたスタートアップの株式評価額を27年までに100兆円に高める目標を掲げた。現状の約3〜4倍となる意欲的な設定だ。画餅に終わらせないためには、グローバル市場での成長を後押しするVCの知恵と工夫が不可欠になる。

(新興・中小企業エディター 鈴木健二朗、山下美菜子)

(日本経済新聞)

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