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ZHD、LINEのスピードに託す再成長 9000万人生かせず 2023/02/03

Zホールディングス(ZHD)はLINEとの経営統合3年目を前に、傘下のヤフーを含む3社合併を決めた。これまで融合が進まず、国内最大のSNS(交流サイト)が抱える9000万人超の顧客基盤を成長に生かせなかった。4月からの新体制では3人の代表取締役のうち2人がLINE出身者となる。チャレンジ精神が宿るという「LINE流」の経営で立て直しを目指す。

「成熟したヤフーに対して、LINEはチャレンジが多い会社だ」。ZHDの川辺健太郎社長は2日に開催したアナリスト向け説明会で社風の違いを強調した。

ZHDは同日、23年度中の3社合併とともに、4月から川辺氏が会長、代表取締役でLINE社長の出沢剛氏が社長CEO(最高経営責任者)に就く人事を発表した。21年3月にLINEと統合してから、川辺氏と出沢氏は共同最高経営責任者(Co-CEO)として経営を担ってきた。新体制では2人に加え、LINEの生みの親である慎ジュンホ氏が代表取締役に名を連ね、サービスの開発を統括する。ヤフー出身の川辺氏は財界活動に軸足を移し、LINE出身の出沢氏と慎氏が経営を主導することになる。

関係者によると、韓国ネイバーが母体のLINEは「失敗してもいいからまずやってみる」という社風でサービスの改廃も早い。例えば公式アカウントの前身「LINE@」のコマース機能は、サービス開始から1年ほどで閉じた。足元ではライブ配信で商品を販売するライブコマースの人気を受け、専用アプリのサービス開始に向けた準備を急ピッチで進めている。

LINEはサービス開始から10年超。他方ヤフーは創業から四半世紀が過ぎ、石橋をたたいてから渡るようになっているという。「両社の融合が進まなかったのは企業文化の違いが根底にある」(関係者)。新体制の布陣には、経営をLINE流に変えることで経営のスピードを速め再成長を目指す決意がにじむ。

「そろそろ結果を出すべきだ」
ZHDの親会社であるソフトバンクの宮川潤一社長は「(統合後)新たなサービスが出てこない。そろそろ結果を出すべきだ」と話す。

融合が遅れたのは、統合直後に発覚したLINEの個人情報管理問題の影響も大きい。業務委託先の中国企業の従業員が氏名や電話番号などのユーザー情報を閲覧できる状態だった。管理体制を抜本的に見直すため、サービスの融合に不可欠なヤフーとLINEのID連携は23年度以降に先送りとなった。LINEからヤフーなどZHD傘下の多様なサービスに送客する。そんな計画を描いたが、いまだ満足にできていない。

ZHDは22年11月、ヤフーとLINE、スマートフォン決済「PayPay(ペイペイ)」の3社で、新たな共通マイルのサービスを3月から始めると発表した。統合効果を示すための苦肉の策といえる。PayPayのユーザーは5400万人を超え、飲食店や商業施設など398万の加盟店を抱える(22年12月末時点)。この顧客基盤も活用しグループ連携を前進させたい考えだ。

経営環境の激変にも見舞われた。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要はネットサービスの追い風となったが、外出自粛ムードが緩むと広告事業が打撃を受けた。

TikTok台頭、広告に打撃
22年10〜12月におけるZHDの広告事業の売上収益は前年同期比で1.2%減。21年の同13.2%増から一気にマイナスに転落した。川辺社長は「広告商品自体の競争力が競合と比べて低下している」と危機感を示す。その一つが、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」が開拓したショート動画分野だ。

15秒程度から数分のショート動画は若者を中心に人気が急速に高まり広告主を引き付けている。LINEが参入したのは21年だ。ZHDは動画配信サービス「GYAO!(ギャオ)」を3月末に終了し、人員などをLINEのショート動画事業に集約する。

20年代前半に国内で取扱高首位を目指すとしたECも後手に回る。旅行などのサービスや海外も含めたZHDの22年7〜9月のEC取扱高は1兆262億円。ライバルの楽天グループは国内のみで1兆3500億円と差は大きい。ヤフーは物流網の整備や品ぞろえの拡充などを進めてきたが、楽天やアマゾンと異なる明確な特徴を打ち出せずにいる。

成長が鈍化するなかZHDは22年度下半期にECの販促費を大きく絞っている。その結果、22年10〜12月の国内物販ECの取扱高は前年同期比0.9%増と、21年の同15.1%増と比べて急ブレーキがかかった。

ヤフーの小沢隆生社長は「より利益率の高い事業に販促費を振り向ける」と強調する。だが、市場からは「中長期的な成長に寄与するはずのECへの投資を絞ることが最善策なのか」と疑問の声も上がる。

3日の東京株式市場ではZHDの株価は一時14%超高となった。3社統合や経営体制の変更で、低迷する事業のテコ入れが進むとの期待感からだ。グループ傘下のサービスを整理・融合し、成長軌道に戻れるか。ZHDの立て直しが始まる。

(松田直樹、橋本真実)

(日本経済新聞)

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